灰かぶりの誓い
第2話
侍女が王冠の勅令を携えて発ってから、一刻も経たぬうちに次の使者が馬を駆ってきた。
セラは大広間の窓辺に立っていた。破れた袖はそのままで、街道を見下ろしている。背後には、あの赤い封蝋の勅令が、まだ開かれずに置かれたままだった。王冠の刻印が深く押し込まれている。
「閣下」コリンの声は低く抑えられていた。「王冠の勅令です。ドレンが」
彼女は振り返った。
ケイレン・ドレンが中庭で馬から降りた。窓のほうへは目もくれない。馬の手綱をヴェイルモント家の馬丁に渡す仕草は、馬そのものがすでに彼の関心の外にあるかのようだった。
黒い上着には折り目ひとつない。襟元の銀鎖が朝の光を弾く。白い手袋は片手だけ。顎の傷痕が、肌の上で青白く浮き立っていた。
セラは無意識に卓の縁を探った。かつてこの男が剣を振り上げるのを見たことがある。振り下ろすのも。
「通して」
大広間には古い煙と冷えた石の匂いが残っていた。夜の残骸は使用人たちが片づけていたが、床にはまだ長靴の擦り跡が残っている。ケイレンは一人で入ってきた。
彼女の四歩手前で足を止める。正確に。測ったように。
「セラ・ヴェイルモント公爵閣下」声は低く、急くところがない。「ケイレン・ドレン。帝国枢機院より、閣下の護衛として参りました」
「あなたのことは存じております」
「でしたら、私が飾りなどではないとご存じのはず」彼は折り畳まれた勅令を取り出した。黒い紐で封じられ、蝋が押されている。「これが私の任です。お読みになってもよろしい」
セラは受け取らなかった。
「読み上げなさい」
彼の瞳に何かが走った。いや、走ったのではない。沈んだのだ。刃が、それに触れようとする手をじっと見るような目つきで、彼は彼女を見ていた。
「帝国枢機院の命により」彼は読み上げた。「ケイレン・ドレンをセラ・ヴェイルモントの身辺に配し、枢機院が別命を下すまで、あらゆる害意からその身を隔てるものとする。この誓約は証人のもとに記録され、拘束力を有する」
拘束力。その言葉が、セラの腹の底を冷たく締めつけた。
「ご自分が何を受け入れるのか、おわかりですね」それは問いではなかった。
「王冠が何を寄越したのかはわかっています。勅令を受け入れますわ」
彼女はカーテシーをした。
正確で、空虚で、残されたただひとつの鎧だった。
ケイレンの顎が引き締まる。驚きではない。不興だ。
「勅令には控えがあります。私が持ちます。気分や口論で解任はされません」
「では、お互い理解したということで」
「そうでしょうか」
セラは沈黙に答えさせた。
コリンが階段のアーチのそばで待ちかねていた。手には新しい報告書。朝はすでに用件で裂け始めており、これは待たせられないものだった。
「閣下」ケイレンの視線はまだ彼女の顔から離れていない。「護衛官に勅令を読むよう求め、ご自身は触れず、質問もひとつなさらなかった」
「する必要がありまして?」
「たいていの方は、どこまで近くに立つのか尋ねます」
「誓約が求める場所に立つのでしょう」
「私の立つ場所は私が決めます」彼は一拍置いた。「誓約が定めているのは、私があなたを生かしておくことだけだ」
「では、質問で煩わせることはしないわ」
ケイレンは一歩踏み込んだ。脅すほどの距離ではない。だが、二人の間の空間は確かに彼のものになった。
「聞いてください」
「何を聞けと?」
「退けという命令に、私が従うかどうかです」
セラは顎を上げた。
「従うの?」
「いいえ」
「なら、命令を無駄にはしないわ」
一拍の沈黙。
「私に何を望むの?」とセラは尋ねた。
「何も」
「令状を持つ男は、必ず何かを望むものよ」
「私は脅威を取り除くだけです」彼の緑の瞳は剣光のように平坦だった。「結果までは取り除かない」
火傷した手のひらが袖の中で疼いた。セラは触れないまま、口を開く。
「なら、役に立つわね。近くにいて。報酬をもらった分は守りなさい」
彼は眉をひそめた。それでも、彼女の後ろに従った。
オルシーナ・ハルウィックが到着したのは、広間が静まりきる前のことだった。無論、そうなるに決まっている。
彼女は季節の変わり目のように入ってきた。エメラルドの絹、高く編んだ銅色の髪、両肩には蛇の留め具。オレンジの花とカルダモンの香りが、彼女より先に応接間へと流れ込む。
「セラ」声はリボンのようにしなやかだった。「聞いてすぐ参りました。襲撃者ですって? あなたの寝室で。どうか座って。倒れる前に」
セラは立ったままだった。
「ハルウィック卿」彼女は最小限の会釈を返した。「お気遣いが早いこと」
「大切な方には、いつもこうですから」オルシーナの琥珀色の瞳が部屋を一掃した。内側のアーチの近くに立つケイレンを捉え、そしてセラへと戻る。笑みは浮かべていたが、瞳までは笑っていない。「そして今は王冠の護衛まで。なんと心強いことでしょう」
「枢機院の決定よ」
「もちろん、そうでしょうとも」オルシーナは首を傾げた。「それでも、重みを感じずにはいられないでしょう。ドレンの人間が背後にいる。どの家門も、そう注目されるわけではありません。けれどヴェイルモントは、いつも目を引いてきた。違いますか?」
彼女は長椅子へと歩み寄った。座らない。沈黙に語らせた。
「ハルウィックの保護を申し出ようと思って来たのです」とオルシーナは言った。「我が家の者たちを、あなたの家の者に加えましょう。小さな一団です。この忌まわしい件が落ち着くまでの間、あなたの指揮下に」
「王冠はすでに護衛をつけたわ」
「ええ。護衛を」彼女はその言葉を矮小に響かせた。「たった一人。公爵夫人に対して。枢機院はあなたの危機を本物だと思っているのか、それとも単に都合がいいだけなのか、疑いたくもなりますね」
セラは瞬きもしなかった。
「ならば問題は、枢機院がハルウィックをどう見ているかね」
オルシーナの笑みが明るくなった。何も温まらない。
「言い方を誤ったかもしれません」彼女は近づき、片手を差し伸べた。セラは両手を組んだままだった。オルシーナはその手を優雅に脇へ下ろす。「ただ、ヴェイルモントが独りで立つべきではないと言いたかったのです。あなたには弟も夫もいない。王冠の重みを共に受ける者がいない」
「私には家の者たちがいるわ」
「家の者たちは散ります」オルシーナは囁いた。「風向きが変われば」
「なら、風向きを変えさせないまでよ」
オルシーナが軽やかに、鈴を転がすような笑い声をあげた。
「ああ、そこにいらしたのね」
彼女は身を引き、手袋の皺を丁寧に伸ばした。
「では失礼いたしますわ。ですが、差し上げたお話、どうぞお考えになって。誇りは脆い壁でございますよ、公爵閣下」
オルシーナは滑るような足取りでアーチへ向かい、ケイレンの傍らで一旦足を止めると、ゆっくりと彼を値踏みするように見上げた。
「しっかりお守りなさい。彼女の敵は、ご本人が認めるよりずっと多いのですから」
ケイレンは何も答えなかった。
やがて彼女が去ったあとも、オレンジの花の香りだけが、生暖かい空気にまとわりついて残った。
セラは正面玄関が閉まる音を聞くまで、その場に立ち尽くしていた。
「窓を開けて。それから水を頂戴」
コリンにそう命じる。
あの香りを知っている、次に現れたら必ず気づく、とは口にしなかった。けれど、その記憶は引き出しに仕舞い込んだ刃のように、心の奥へと収めた。
上階の廊下は一層冷え込んでいた。
セラはケイレンだけを連れて、ひとりで歩いた。彼の足音は彼女のものより静かで、それが無性に癪に障る。
「なぜ私を受け入れた」
ケイレンが問うた。
セラは歩みを止めない。「王冠が選択肢を残さなかったのよ」
「選択肢は常にある」
「死を選ぶ自由なら、ね」彼女は歩き続けた。「それは選択とは呼ばないわ」
ケイレンは半歩後ろ、宣誓が許すぎりぎりの距離を保って並んだ。
「私を信用していないな」
「ええ」
「ならばなぜ、傍に置く」
セラは立ち止まった。廊下は東側の窓で行き止まりになっていた。細く高い窓から、弱々しい光が床板に縞模様を落としている。
「あなただって武器でしょう」彼女は言った。「そして、この屋敷はもう一度破られている。だからよ」
ケイレンは長い間、黙っていた。
「手を隠しているな」
セラの左手が、いつの間にか右の袖口へ這い寄っていた。彼女はそれを止め、両腕を組んだ。
「襲撃のとき、ナイフを強く握りすぎたのよ」
それは嘘だった。ケイレンの視線が袖に落ちる。だが、追及はしなかった。
彼が食い下がるのを、セラは待った。しかし、彼は押してこない。
その沈黙は、どんな問いよりも性質が悪かった。彼女が震えを隠す前に、彼はそれを見た。見た上で、素早く立ち、背後に続く廊下を走査し、影の落ちた曲がり角と彼女の間に半身を割り込ませた。
追及ではなく、護衛の動きだった。
「王冠は選択肢を残さなかった」セラは繰り返した。「あなたもよ。それだけのこと」
ケイレンの視線が彼女へ戻る。
「あなたの身体は守れる、公爵閣下」
彼は一拍、間を開けた。
「だが、それ以外の何かを私に求めるな」
セラは彼の目を見返した。
「身体は守ってもらうわ。でも、私の告白を受け取ることは未来永劫ない」
その言葉は、二人の間に置かれた刃のように落ちた。ケイレンが動きを止める。口を開き、閉じた。
それから彼は、鋭い一動作で首を傾げた。
「承知した」
だが、下がりはしない。
廊下は静まり返り、屋敷は息を潜めていた。
セラは窓から背を向け、階段へと歩き出した。彼の足音が、間近で静かに追いかけてくる。
二人とも、互いに分かっていることを口にはしなかった。
宣誓が、彼を離さない。