FeverStory

破滅の未来を変えるため、冷酷宰相に契約結婚を申し込んだら、溺愛が始まりました

第5話 駒は夜に駆ける

朝の光が小食堂の窓を通して、白い卓布の上に細長く落ちている。窓枠の影がテーブルクロスに青灰色の縞模様を描き、磨かれた銀のカトラリーがその光を静かに反射させていた。ティーポットから立ちのぼる湯気だけが、この部屋で動いている唯一のもののように揺らめいている。

リリアンは向かいの席に座るクロードを、銀のカトラリー越しに盗み見た。前夜の緊迫が嘘のように、彼の手元は静かにナイフを動かしている。長い指がフォークを操る仕草はいつも通り正確で、無駄な力みなど微塵も感じられない。だが目の下の薄い影だけは、隠しようがなかった。まるで細い墨を刷いたようなその痕跡が、昨夜の出来事を雄弁に語っている。

あの後、本当に眠ったのか。

訊ねることはできない。昨夜交わした言葉の重みが、まだ空気に沈んで残っている。暖炉の火も消えかけたあの広間で、彼が口にした言葉の一つひとつが、この朝の光の中でもまだ溶けきらずに漂っていた。パン皿にのせた手が、かすかに震えそうになるのを彼女はこらえる。

「今日は屋敷を出るな」

クロードが顔を上げずに言った。その声は事務的で、朝の挨拶よりも軽い響きだ。バターを塗ったパンを一口で片付け、彼はすでに次の動作へ移ろうとしている。

「毒の件は私が処理する」

リリアンの指が、わずかに止まった。フォークの先に刺した小さなベーコンの切れ端が、皿の上で所在なさげに横たわる。昨夜の「明朝、話を聞く」はどこへ行ったのか。分析結果を共有すると、確かにあの場で彼はそう言ったはずだった。緊迫した面持ちで、彼女の両肩を掴んで。

(結局、私は駒か)

胸の奥で何かが冷えていく。心臓のあたりからじわりと広がるこの感覚は、前世でも覚えがある。期待した分だけ、冷たさは深くなる。だが表情には出さない。ここで逆らえば、むしろ監視は強まる。彼女はゆっくりとまばたきを一つして、感情を瞼の裏に押し込めた。

「……承知しました」

リリアンは静かに頷き、繊細な模様の入った陶器のカップに手を伸ばした。紅茶の水面がかすかに揺れる。窓辺で揺れるレースのカーテンの影が、液面にちらちらと落ちては消えた。指先に力が入りすぎていたらしい。カップの取っ手を握る薬指が、白くなっている。

彼女は気づかなかったが、カップを持ち上げる瞬間、クロードの視線がほんの一瞬だけ彼女の指先を捉えていた。何かを言いかけるように、彼の唇がかすかに動いた。けれど結局、その言葉は朝の静寂に溶けて消える。

クロードはすでに席を立ち、執事が差し出した外套を受け取っている。深い紺色のウールの外套。昨夜、彼女の肩にもかけられたそれを、今は彼自身が纏おうとしている。朝食はほとんど手をつけていない。スクランブルエッグは冷め、ティーカップの中身も半分以上残されたままだ。彼が扉へ向かう背中を、リリアンはただ見送った。広い肩。まっすぐに伸びた背筋。そのすべてが、彼女に背を向けている。

扉が閉まる音。オーク材の重厚な扉が、かちりと枠に収まる微かな振動が、食堂の静けさを一瞬だけ揺らした。

食堂に残されたリリアンは、ひとり紅茶を口に含んだ。冷めている。華やかな香りは失せ、渋みだけが舌の上に広がる。カップをソーサーに置く音が、やけに大きく響いた。カチンという硬質なその音は、彼女の決意にも似ていた。

(守られるだけの駒には、もう戻れない)

彼女はゆっくりと立ち上がった。椅子の脚が床に擦れる音が、がらんとした部屋に響く。窓の外では、もう春の気配を知らせる小鳥が鳴き始めている。だがその声は、彼女の耳には届かなかった。

私室に戻ると、ソフィアが窓辺で待っていた。シンプルな黒のワンピースを着たその姿は、逆光で輪郭だけが浮かび上がっている。手には小さな紙片。折りたたまれたそれが、朝の光の中でかさりと乾いた音を立てた。

「お嬢様、例の薬師らしき男のことです」

ソフィアは声を潜め、一歩近づいて紙片を差し出す。彼女の靴音さえも、絨毯に吸い込まれて消えた。

「下町の古い伝手に当たりました。毒の調合を請け負ったと噂される者が、西の廃墟区画に潜伏していると。聞けば、もともと宮廷御用達の薬種商だったのが、処方を誤って没落した男だそうです」

リリアンは紙片を受け取った。紙の端が微かに湿っている。ソフィアが握りしめていたせいだろうか。それとも雨露をくぐってきたのか。廃墟区画の見取り図が簡単に書き込まれている。赤い印がついた場所——古い薬種商の地下室らしい。インクの線はところどころ掠れているが、要点は明瞭だった。

「外見は」

「四十がらみ。左の耳たぶが欠けている。いつも黒い外套で、フードを深く被っているそうです。伝手の話では、右足を少し引きずって歩くとも」

リリアンは紙片を折り畳み、ドレスの隠しに滑り込ませた。胸元の布地の下で、紙が肌に触れる感触がする。

「屋敷を抜け出す手筈は」

「今夜なら。星霊祭の前倒しで、夜警の詰所は手薄になります。近衛の半分が王宮警備に借り出されるとかで、巡回の間隔も普段の倍に広がるそうです。裏門の当直が丑三つ時に交代する。その隙間が半刻ほど——」

ソフィアは一息置き、リリアンの目をまっすぐに見た。窓から差し込む朝の陽射しが、彼女の鳶色の瞳を金色に透かしている。

「お嬢様、本気ですか」

「ええ」

リリアンの声は低く、しかし迷いがない。朝の食堂で感じた冷たさが、今は明確な熱に変わっていた。

「宰相閣下は私に情報を与えない。ならば、自分で取りに行くまでよ。昨夜の毒は、明らかに閣下を狙ったものだわ。それなのに、肝心の私には何も——」

彼女は言いかけて口を閉じた。クロードへの不満が、思いのほか強い調子で漏れ出そうになったからだ。

ソフィアは何かを言いかけて、やめた。代わりに小さく笑う。口元に浮かんだそれは、主人への忠誠というより、同じ賭けに乗る者の昂揚にも見えた。

「お供します」

「危ないわ」

「それを承知で、下町の伝手を当たったのは私です」

リリアンは窓の外に目をやった。庭の向こうに、クロードが乗った馬車が門を出ていくのが見える。黒塗りの馬車が、朝陽を浴びて小さく輝きながら遠ざかる。御者台の横には護衛の騎馬が二騎。すべてが規則通りで、無駄のない動きだった。

(あなたが守るべき駒のままでは、次はない)

彼女は右手の指輪の下にある古い傷跡を、無意識になぞっていた。指先に触れる、かすかな凹凸。前世でも今世でも消えないその痕は、彼女が過去に支払った代償のすべてを象徴しているようだった。

「丑三つ時ね。それまでに準備を」

ソフィアは頷き、足音を忍ばせて部屋を出ていった。ドアの向こうで、彼女の気配がすっと遠ざかる。

リリアンは机に向かい、紙片をもう一度広げる。窓辺に置かれた小さな花瓶には、今朝摘まれたばかりのスズランが生けてある。その甘い香りが、緊張で強張った彼女の肩をわずかに和らげた。地下室への経路、見張りの位置、侵入の時間——前世で几帳面に計画を練る癖は、こんな場面でも役に立つ。彼女は前世の記憶を指でなぞるように、図面の一点一点を確認していった。廃墟区画の西側にはかつて水路があったはずだ。今は干上がっているが、その跡を伝えば人目を避けられる。

陽が傾くまで、まだ半日ある。彼女は羽根ペンを手に取り、小さな紙に要点を書きつけ始めた。インク壺の中で、ペン先がかすかな音を立てる。文字を書くたびに、心臓の鼓動が少しずつ落ち着いていくのを彼女は感じていた。

書斎の窓から差し込む午後の光が、床に細長い影を落としていた。その影は時とともにゆっくりと伸びて、部屋の空気そのものが金色から橙色へと移り変わっていく。

リリアンは背もたれに身を預け、静かに目を閉じる。目の裏を覆う薄い皮膚の向こうに、昨夜の光景が灼きついている。毒見役が倒れる音。それはテーブルクロスを引き裂くような、鈍く重い音だった。凍りついた広間。人々の悲鳴。倒れたゴブレットからワインがこぼれ、白いテーブルクロスを赤く染めていく。そしてクロードの腕の中——彼女をかばうように引き寄せたあの一瞬の温もりが、恐怖と奇妙に混ざり合って蘇る。

指先が冷たい。昼下がりの穏やかな陽射しとは裏腹に、彼女の手は氷のように冷えていた。

(あの人は、私を駒だと言う)

クロードの言葉を思い出すたび、胸の奥で何かが軋んだ。守る、と彼は言った。だがそれは、盤上の駒を失わないための言葉だ。彼女の意思を問うものではない。宰相邸の静けさは深く、耳鳴りに似た沈黙が部屋を満たしている。壁にかけられた古い絵画も、並ぶ書物の背表紙も、すべてが整然としすぎていて——牢獄を思わせた。美しく飾られた檻の中に、自分は座っているだけなのだと、彼女は改めて思い知る。

前世の断頭台が脳裏をよぎる。

ざわりと首筋が粟立つ。群衆の喧騒。首を置く冷たい台座の感触。そして自分を見捨てた者たちの、無関心な顔の数々。

誰かに処遇を委ねた末の死。待つだけだった日々。今ここで同じことを繰り返せば、結末も同じだ。リリアンは自分の手のひらを見つめる。細く白い指。宝石に飾られた手。けれどその手はまだ、何一つ掴んでいない。

リリアンはゆっくりと目を開けた。

「待つだけの駒は、もう終わりだ」

声に出さない宣言が、喉の奥でかたちになる。舌の上に乗せたその言葉は、思ったより熱を持っていた。背筋に力が戻り、項の緊張がわずかに解けた。彼女は窓の外を見つめる。庭の芝生が、午後の陽射しを浴びて黄金に輝いている。夕暮れにはまだ間がある。その夕闇こそが、彼女の最初の一手を隠してくれるはずだった。

日が傾き、書斎の空気がわずかに青みを帯びた頃。窓の外では、庭師が最後の水撒きを終えて道具を片付けている。

扉が開いた。クロードが入ってくる。外套を従者に預けたばかりなのか、手にはまだ手袋をつけたままだ。黒い革の手袋が、彼の指の動きを強調している。廊下から流れ込んだ空気が、書斎の滞留した静けさをかき混ぜた。

「お前、まだ起きていたのか」

「お待ちしておりました」

リリアンは立ち上がり、完璧な礼を取った。スカートの裾をつまみ、背筋を伸ばし、首をわずかに傾ける。その動作に淀みはない。表情も声も、昨夜の決意を隠すように静かだ。彼女は自分の心臓が早鐘を打つのを感じながら、それを完璧に覆い隠していた。

クロードは机に向かい、積まれた書類の束を手に取る。彼の執務机の上はいつも整理されているが、今日は特に、すべての紙束が直角に揃えられていた。

「調査の進捗は」

リリアンの問いに、彼は顔を上げなかった。ページをめくる指が一瞬止まり、そして何事もなかったかのように動きを再開する。

「問題ない」

短い返答だった。紙の上を走るペン先の音だけが、彼の存在を証明している。それだけだ。

リリアンの背中に冷たいものが走る。脊椎をなぞるようなその感触は、前世で自分を見捨てた者たちの沈黙とあまりに似ていた。情報を与えず、判断材料も渡さず、ただ結論だけを告げる——あの温度。あの無関心の壁。彼女の指が、スカートのプリーツをそっと握りしめる。

「そうですか」

彼女はそれ以上問わなかった。代わりに微かに笑みを浮かべ、紅茶の準備を整える仕草を見せる。サイドテーブルの上のティーセットに手を伸ばし、ポットの蓋を開けて茶葉の香りを確かめる。手つきはいつも通り優雅で、指先の震えなど微塵もない。茶こしに葉を移す音だけが、かさこそと部屋に響いた。

クロードは左手の手袋の縁を無意識に弄っていた。親指で、手首のあたりの革をなぞる仕草。彼が何かを考えあぐねているときの癖だ。

(気づいているのか)

リリアンは視界の端でその仕草を捉えながら、呼吸を整える。湯気の向こうに揺れる彼の横顔は、何かを言いたげに見えた。けれどその唇は結局、引き結ばれたままだ。彼の沈黙は「駒扱いの継続」だ。ならばこちらも、駒のままではいられない。

「わたくし、少し疲れましたので、自室に戻ります」

「ああ」

クロードの返事はやはり短い。リリアンは扉に向かいながら、夜の計画を頭の中でなぞった。ソフィアはもう準備を終えているはずだ。彼女の背中を見送るクロードの視線に、かすかな違和感が浮かんだが——追及の言葉はなかった。ただ、彼の右手が一瞬、机の端を握りしめたように見えたのは、あるいは気のせいかもしれない。

書斎を出たリリアンは、自室への廊下でソフィアとすれ違う。リネンを抱えたソフィアが、ほんの一瞬だけ顔を上げた。視線を交わすだけで、言葉はいらない。彼女の瞳の中に「準備は整った」という光が宿っているのを、リリアンは確かに読み取った。すべては深夜に。

夜も更け、邸内の使用人の動きは最小限になっていた。廊下に置かれた燭台の火もほとんどが消され、壁に掛けられた肖像画だけが、月明かりにぼんやりと浮かんでいる。空気は冷たく、吐く息がかすかに白むほどの冷え込みだ。

リリアンは簡素な外套を纏い、フードを深く被ってソフィアの後ろに続く。足元はいつものドレスではなく、動きやすい乗馬用のズボンを穿いている。彼女の足音は驚くほど静かで、廊下のきしみさえも計算ずくのように避けていく。ソフィアはまるで屋敷のすべての床板の癖を知り尽くしているかのように、迷いなく歩を進めた。

使用人通用口に着いた。調理場の裏手にあるこの扉は、夜になると誰も近づかない。外は闇に沈み、月明かりだけが細い道を照らしている。今夜の月は細く、まるで誰かが爪で空を引っ掻いたような三日月だった。ソフィアは片手で合図し、壁に張り付いた。

しばらくの沈黙。自分の心臓の音さえも、この静けさの中では大きく聞こえる。遠くで見張りの足音が規則的に響いている。三歩進んで、止まり、また三歩。その歩調が遠ざかる瞬間、ソフィアは扉を静かに押し開けた。蝶番の軋みさえも、風の音に紛れ込ませる。夜風が二人の頬を冷たく撫でていった。

リリアンは息を飲んだ。

(この手際——やはり、ただの侍女じゃない)

その動きには確かな訓練の後がある。盗賊ギルドの知識か、それとも別の何かか。闇に溶けるような身のこなし、周囲の音を読み切る集中力、そして事前に仕入れた見張りの交代時間の正確さ。確信に変わるまでにはもう少し情報がいる。だが今は、その能力に感謝するだけだ。

二人は通用口を抜け、用意された馬車に乗り込んだ。御者はソフィアが手配した者だ。黒いマントに身を包み、帽子を目深に被っている。顔は見えないが、金だけの雇用関係ならば不要な詮索はしない。リリアンは座席に身を沈めながら、外套の下に隠した短剣の重みを確かめた。

馬車が動き出す。車輪が石畳を噛む音が、小さな箱の中にこもった。がたん、という振動が、二人の肩を揺らす。

「見張りの周期、正確に把握していたのね」

リリアンの言葉に、ソフィアは肩をすくめる。フードの奥で、彼女の口元がかすかに綻んだのが見えた。

「事前に下見できる時間はありましたから。お嬢様が書斎で計画を練っておられる間に、私は私でやれることを」

「それだけかしら」

ソフィアは答えなかった。馬車の小さな窓から、街灯の明かりが断続的に差し込み、彼女の顔を等間隔で照らし出しては闇に戻す。その沈黙の温度を、リリアンは計る。問い詰めるのは後だ。今はこの機会を活かす。

「男の潜伏先は」

「下町の旧倉庫街。三番区画の奥です」

ソフィアは外套の内側から小さな地図を取り出した。馬車の中に吊るされた小さなろうそくの灯りに照らされて、紙面がぼんやりと浮かび上がる。建物の配置と見張りの数の推測が、細かい文字で書き込まれている。

「表の入り口は二人。廃墟とはいえ、この男にとっては大事な拠点なのでしょう。見張りは定期的に交代しているようです。裏手に回れば、物資搬入用の通路があるはず」

「突入はそこから」

「ええ。ただ——」

ソフィアは地図の一点を指差した。彼女の指先は、インクで塗りつぶされたある通路を示している。

「この通路、最近封鎖された形跡があります。現地で確認しましたが、新しい板と釘で塞がれていました。別の誰かが先に使ったのかもしれません」

リリアンの背筋に緊張が走る。封鎖された通路。それは単なる老朽化か、それとも計画的に何かを隠すための処置か。

「誰か」

「わかりません。ですが——この封鎖の仕方、少し妙でして。外から入るのを防ぐというより、中から出るのを防ぐような塞ぎ方だったんです」

馬車が大きく揺れた。石畳の継ぎ目を乗り越えた衝撃が、座席の底から突き上げる。外では下町の灯りがちらつき始めている。安宿の看板や、深夜まで開いている酒場の窓からこぼれる橙色の光が、馬車の中を断続的に照らした。ろうそくの火が揺れ、二人の影が壁に踊った。それはまるで、これから踏み込む闇を予告するかのような舞いだった。

廃墟区画に向かう道は暗く、人の気配は薄い。街灯の数も減り、馬車は次第に闇の中へと進んでいく。

その頃——。

下町の廃墟区画では、一人の男が震えながらひざまずいていた。割れた石畳の上に膝をつき、歯の根が合わない音が闇に響く。目の前には黒衣の人物。顔は深くフードに隠され、声だけが夜気を震わせる。冷たい空気の中で、その声はかすれた金属音のように響いた。

「明日までに証拠を消せ」

黒衣の人物は短く命じ、くるりと背を向けた。マントの裾が、床の埃を舞い上げる。

「あの女が来る前に、すべてを灰にしろ。痕跡を一つでも残せば、お前の命はないと思え」

男は這うように立ち上がり、旧倉庫街へと駆け出す。右足を引きずりながら、廃墟の闇に吸い込まれていくその姿には、恐怖だけがまとわりついていた。

フードの人物は闇に溶けるように消えた。あとには月光だけが、誰もいない廃墟を青白く照らしている。

馬車はまだ、下町の入り口に差し掛かったばかりだった。車輪の音が、眠る街に静かに吸い込まれていく。

破滅の未来を変えるため、冷酷宰相に契約結婚を申し込んだら、溺愛が始まりました第5話 駒は夜に駆ける